そばと日本酒
日本酒は嗜好に合わず、普段は呑まない
ところが、 そばを食べるとなると、
その組み合わせが最高のひとときとなるから不思議なものだ
/
せめて、好きな銘柄を、
と望むが、
いい酒は4合瓶からしか売られていない
残した酒を、
味が落ちてしまうから、と、
無理してまで吞みたくはない
いつもそんな瑣事に迷いが走る
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そして、迷いながらに、
そばつゆを茹で、
そば粉をこねる
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今日はちょっと伸ばしが足りなかったかな
田舎そばになってしまったと、
苦笑しつつ、 それでも旨いと、
無心になって頬張る
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市販されたものしか知らなかったとき、
戸隠で受けた興奮は忘れられない
それには到底及ばないが、
たとい拙いものでも、
口にする度、記憶が蘇る
/
定時制高校に勤めていた頃、
給食時となると、
それが美味しくないと、
きまって門外へと、 脱け出す生徒がいた
「生きている間にあと何回食べられると思ってるの
?」
まだ、齢、十七、八にしかならないというのに、
そんなことを真顔で語っていた
/
他県では、同じような境遇にいる生徒が
安い菓子パンをかじって飢えを凌いでいるというのに、
贅沢は人に贅沢であるということを
気づかせてはくれない
/
若い時の私は人生に飢えていた
ただ齢を重ねるだけの、
刹那的な生き方はしたくなかった
幸いにして
大学で道が見つけられ、
本を貪る生活を始めると同時に、
食べることの無駄を感じた
下宿生活では
ただ腹を満たすことができればそれでよかった
/
現在、 そばを打ち、
それに 少しのアルコールさえあれば
それだけで仕合わせを感じることができる
べつに高価なものを食べたいとも思わない、
それで良いと思っている
/
何をもって良しとするか、
それには生来のものがベースにあるのだろうが、
生き方、人生観に基づいて沁み込んだものも
大きく影響しているのではないかと思う
2024,05,13
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