デジタルチケット
ナショナルギャラリー展拝観を思い立ち、西洋美術館の案内に従ってイープラスのホームページを開いた。
チケット入手のためには会員登録が必要だと知り、画面から求められるままに情報を打ち込んでゆく。名前、生年月日、住所・・・だんだん腹が立ってきた。たかだか一枚のチケットのために、その実態を寸毫もあずかり知らぬ「虚」にひれ伏し、かくまで裸を晒さなければならないのか、提供した情報の将来にまで渡る秘匿性をいったい誰が保障してくれるのか。
胸中、さまざまな思いが交錯した。私は作業を拒否した。インターネットという仮想世界に存在していたとき、現実は私によどみなく、そして間断なく語り掛けていた。心を奪われるな、と。しかし、まどろみはなかなか冷めなかった。デカルトは自問した、「今、もしかしたら夢のなかにいるのかもしれない」、と。 生まれてから私はずうっと夢を見続けているのかもしれない。 生まれたと思っていることさえ夢なのかもしれない。
今、世界は現実から仮想世界へと走り続けている。そして、世界をますます危ういものとしている。
詐欺屋は仮想の世界から獲物をねらい、獣のように眼を光らせる。心が叫んだ 現実を見よ!
私はファミマへと自転車を走らせた。
いつか、人間は仮想という甘美な世界にまったき屈服を余儀なくされるに違いない。
2020,10,09
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