ビスマルクとゲンゼリーゼル


ビスマルクとゲンゼリーゼル

ヤフー記事に「ビスマルク氏引退後は何を」とあるのを見て開いてみた。ドイツ宰相についての歴史的考察かと思ったら、どこかのサッカー選手の事だと知って苦笑した。年代によって、固有名が指し示す対象も異なるようだ。

 三十年も前のことになるだろうか、 ビスマルクが学生時代を過ごした下宿を見たくて、ドイツ語教室に通う合間にゲッティンゲンを訪ねた。今となっては記憶も朧げだが、雨の中、川沿いに小ぶりな小屋のような建物を見つけた。鍵がかけられていて、残念な気持ちでしばらく外観を眺めていると、いきなり学生が眼前で自転車を止めて、私に見学希望か尋ねてきた。彼は、その建物の管理者だという。私が「Ja.(はい)」と答えると、 彼は大学に向かっていたものの忘れものを思い出して戻ってきたところで、あなたはとてもラッキーだと矢継ぎ早に語った。 私は幸運に感謝し、戸外で待ってくれている学生のために見学もおざなりに早々に退室した。そのためか、室内の様子についての記憶はほとんどないが、落書きが華々しかったような。。。 ビスマルクの学生時代は酒浸りでたびたび学生牢に収監され、とてもドイツの将来を決定する人物像としては映らなかったと聞く。 人は人のことを常に評価の対象としているが、人は一時の状態でのみ判断されてはならないのかもしれない。ビスマルクはそんな戒めを示す好例ではないかと思う。ゲッティンゲンを訪ねた目的は街の象徴であるゲンゼリーゼルを見ることにもあった。ガチョウを籠に載せたゲンゼリーゼルの像が土産品になっていて、その愛らしい姿に惹かれたが、生憎その日は休日で閉店、買うことはできなかった。それで、後日、私はその店をふたたび訪れた。 今、ゲンゼリーゼルは拙宅の棚にあって埃を被りながら息をひそめている。 いつも俯き加減で視線を合わせてくれることはないが、私の目に留まるたびあの日のことを想い出させてくれている。  

                               2020,07,14                                          


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